月次マーケットレポート 2026年9月号|価格・流動性・利回り・一次市場

発行 2026-09-06/データ基準日 2026-09-05/出典:DXB Interact(原データ Dubai Land Department の登記記録・Ejari 賃貸契約)

2026年8月のドバイ不動産市場(売買登記・土地/商業含む)は、取引件数が12,018件(前月比−15.0%・前年同月比−35.9%)と、5月に次ぐ今年2番目の低水準でした。一方で年間ベースの平均単価は前年比+3.9%と、まだプラス圏にあります。ただし四半期で見るとアパートメントの単価は2025年後半をピークに−2.7%、ヴィラは−8.1%と、価格の上昇が止まり、出来高の減少が先に進んでいる局面です。このページでは「価格はまだ高い・取引は細い」という状況で、何を・どこで・どの前提で買うべきかを、実データから順に絞り込みます。

前号(2026年8月)までのコミュニティ相場モニターは Property Monitor 集計(94サブマーケット・Title Deed/Oqood 区分)に基づき、本号の DXB Interact とはエリア区分・件数の定義が異なります。本ページ内の前月比・前年比は、すべて同じ DXB Interact の定義で計算しています。
CHAPTER 01

価格の現在地 — 市場はまだ上がっているのか

「ドバイの価格はまだ上がっているのか」という問いには、時間軸によって答えが変わります。年間平均の単価は前年比+3.9%とプラスですが、四半期で見るとアパートメントは2025年後半のAED 1,762/sqftをピークに2026年Q2はAED 1,714(−2.7%)、ヴィラはAED 1,526からAED 1,403(−8.1%)です。主要13コミュニティの12ヶ月比較では大半のエリアで単価がプラスを保つ一方、直近3ヶ月では上下に割れています。年・四半期・エリアの3つの解像度で確認します。

1. 年間平均単価(AED/sqft)

2020年の底(AED 916)から6年連続で上昇、累計+88%。ただし上昇率は2023年+14.2%、2024年+11.6%、2025年+8.4%、2026年+3.9%と、年を追うごとに縮小しています。

2. 四半期で見た単価の転換点

年間平均が隠しているのが2026年に入ってからの反落です。アパートメントは2025年Q3のAED 1,762をピークにQ1 1,749→Q2 1,714。ヴィラはピークAED 1,526からQ1 1,434→Q2 1,403と、下げ幅はヴィラの方が大きくなっています。

ヴィラの単価は2025年Q3に前期比+11.5%と急伸したあと、2四半期続けて下げています。2025年後半の高値で成約した案件ほど、直近の実勢との差が開いている可能性があります。「価格はまだ上がっている」という説明を受けたら、年間平均ではなく四半期の数字で確認することをおすすめします。

3. 主要13コミュニティ — 直近12ヶ月の価格と取引(アパートメント・一次+リセール)

直近12ヶ月(2025年9月6日〜2026年9月5日)と前年同期の比較。グロス利回りはDXB Interactの算出値(直近の取引価格と賃貸契約に基づく)です。取引が69件と少ないPalm Jebel Aliは比較に適さないため除外しています。列見出しで並べ替えできます。主要13以外を含む全195地区の同じ指標はエリア・パフォーマンスで確認できます。

コミュニティ単価 AED/sqft前年比取引件数前年比グロス利回り今後の供給(戸)販売済
最重要の発見。変化率のある12エリア中、単価が前年比プラスなのは9エリア。一方で取引件数が前年比プラスなのは Dubai South(+48%)・Dubai Creek Harbour(+8%)・Damac Hills(+30%)の3エリアだけです。Dubai Marina(−51%)・Dubai Hills Estate(−53%)・Emaar Beachfront(−50%)は取引が半減しています。「価格は維持、取引は半減」——これが主要エリアの共通した姿です。

リセール(中古)だけで見ると

個人間の中古取引だけに絞ると「単価はプラス、件数はマイナス」の構図がさらに明瞭です。中古で件数が増えたのはSobha Hartland(+11%)とTown Square(+10%)のみでした。

コミュニティ(リセール)単価前年比取引前年比グロス利回り利回り変化

4. 直近3ヶ月のモメンタム(前3ヶ月比)

直近3ヶ月(2026年6月6日〜9月5日)とその前の3ヶ月を比べた単価と取引件数の変化です。年間の数字より、いまの勢いを反映します。

コミュニティ単価(全体)前3ヶ月比取引(全体)前3ヶ月比単価(リセール)前3ヶ月比
直近3ヶ月で単価が上向いたエリアも下向いたエリアも、そのほぼ全てで取引件数が減っています。件数が減る中での単価上昇は、高額物件の成約が混じったことによる構成効果を含むため、単独で資産価値の増減と読まないでください。

5. 上昇率上位エリア(参考・DLD区分名)

直近12ヶ月の単価上昇率が高いエリア(アパートメント・一次販売ベース)です。取引の少ないエリアや新興エリアが上位に来やすく、1件の成約で大きく振れる点にご注意ください。

エリア(DLD区分名)単価上昇率(12ヶ月)中央値単価 AED/sqft

6. 投資家への示唆

01 価格の確認は四半期で年間平均は+3.9%ですが、2026年Q2はアパートメント・ヴィラとも前期比マイナス。販売資料の「上昇中」は、どの期間の数字かを必ず確認してください。
02 単価維持と取引半減はセット主要エリアの共通した姿は「価格は維持、取引は半減」です。売却時の想定期間は従来より長く見積もる必要があります(第2章)。
03 ヴィラの反落幅に注意ヴィラは四半期ピーク比−8.1%と、アパートメント(−2.7%)より下げが大きい。2025年後半の高値で買った層の実勢との差が開いています。
出典: DXB Interact「Market Overview」「Area Performance」「Most Active Areas」(原データ Dubai Land Department)2026-09-05取得。単価は取引価格の集計値(AED/sqft)。エリア別の変化率は取引の構成(新築比率・階数・間取り)の違いを含みます。
CHAPTER 02

流動性と出口 — 「出口」は取れるのか

ご提案の前に、リスクから開示します。2026年8月の取引件数は12,018件で、前年同月(18,749件)から−35.9%。1〜8月の累計は112,239件で前年同期比−18.5%、取引総額はAED 350B(前年同期 445B・−21%)です。中でも個人間の中古(リセール)はアパートメント−27.3%・ヴィラ−29.9%と、一次販売より深く落ち込んでいます。価格が数%動いたことより、売りたい時に買い手がいるかどうかが変わったことの方が、投資家にとっては重大です。

1. 月次推移 — 出来高はどこで折れたか

月別の登記件数(土地・商業を含む全登記)。2025年は毎月1.4万〜2.0万件で推移しましたが、2026年は3月に1.35万件へ落ちたあと、5月に10,279件と急減。8月は12,018件で、前年8月の18,749件を大きく下回ります。

8月の取引は5月(10,279件)に次ぐ今年2番目の低さです。夏場は例年件数が落ちますが、前年8月比で−35.9%は季節要因では説明できません。1件あたりの平均取引額も8月はAED 2.38M(前年同月 2.73M)と下がっており、取引の重心が低価格帯・一次販売に移っています

2. セグメント別 前年同期比(住宅・1〜8月)

住宅の売買を「アパートメント/ヴィラ・タウンハウス」×「一次(デベロッパー販売)/リセール(個人間の中古)」の4セグメントに分けた前年同期比です。

セグメント2025年1〜8月2026年1〜8月増減8月単月 前年比
最重要の発見。1〜8月で最も持ちこたえているのはアパートメントの一次販売(−9.2%)で、最も落ちているのはヴィラの一次販売(−43.7%)です。リセールはアパートメント・ヴィラとも約3割減で、8月単月では4セグメントすべてが前年比−20%以下でした。

3. 年初来で見た位置づけ(各年1/1〜9/5の同一期間)

取引件数前年比取引総額前年比

2026年の年初来112,239件は、2025年を下回るだけでなく、2024年の同期間(113,269件)もわずかに下回ります。総額AED 350Bは2024年同期(332B)を上回るものの2025年比−21%。件数が2024年を下回りながら総額は上回っている——1件あたりの単価が上がった分だけ、市場の「厚み」が痩せています。2025年は記録的な年で、2026年はそこから約2割減ですが、それは「暴落」ではなく異常な高水準からの正常化と読むのが妥当です。ただし2024年の水準すら下回っている点は、正常化がまだ底を打った証拠ではないことを示しています。

4. 現金と住宅ローン(2026年年初来)

2026年 年初来前年比

売買が細る中で、リセールの売却益合計はAED 37.9B(前年比+63%)と増えています。取引は減っているのに実現益が増えている——つまり、2021〜2023年に安く買った保有者が、いま利益を確定して売り抜けている構図です。買い手側から見れば、直近の成約価格には「含み益を確定させたい売主」の売却が多く含まれており、値引き交渉の余地はこれまでより広がっている局面と言えます。住宅ローンは件数−10%に対し実行額+12%、平均LTV 75.73%。借りる人は減ったが、借りる人は大きく借りている、という状態です。現金取引が3分の2を占める市場構造は、下落局面での投げ売りを抑える要因でもあります。

5. 対照的に、賃貸市場は動いています

売買と賃貸は逆の動きです。2026年1〜8月のEjari賃貸契約(フリーホールド地区・新規+更新)は289,208件で、前年同期(276,862件)から+4.5%。8月単月は39,645件(前年同月 35,490件・+11.7%)で、同じ月の売買件数12,018件の3倍以上の規模です。

賃貸契約(フリーホールド地区)1月2月3月4月5月6月7月8月1〜8月計
賃貸需要そのものは衰えていません。ただし賃料の中央値は2025年8月のAED 72,210に対し2026年8月はAED 72,000と、前年比でほぼ横ばいです。契約件数は増え、賃料は止まった——「借り手はいるが、賃料をこれ以上払えない/払わない」段階に入ったことを意味します。いまのドバイは「売りにくいが、貸しやすい。ただし賃料の伸びは期待しない」市場です。

6. 投資家への示唆

01 「いくらで売れるか」より「何ヶ月で売れるか」リセール取引が約3割減、8月単月では2割以上減という環境では、売却想定期間を従来の2倍(目安6〜12ヶ月)で見積もっておくのが現実的です。数年内に日本で使う予定の資金など、売却期限が決まっている資金での購入は、いま特に慎重にご検討ください。
02 ヴィラは一次・リセールとも、いま最も出口が細いセグメントヴィラの一次販売−43.7%、リセール−29.9%(1〜8月)、単価は2四半期連続で下落。すでにヴィラを保有していて売却を検討する場合は、価格設定を直近の実勢に合わせる必要があります。逆に購入側から見れば、売り急ぐ売主から条件を引き出しやすい局面です。
03 保有型なら、賃料の「水準」で選び「上昇」を当て込まない賃料中央値が横ばいに入った以上、購入時点の賃料で利回りが成立しない物件は、将来の賃料上昇で辻褄を合わせることができません。第3章で、現時点の賃料と価格で成立している利回りをエリア別に整理します。
出典: DXB Interact「Cycles — Monthly」(月次登記件数。総数は土地・商業を含む/セグメント別は住宅のみ)、「Annual Overview」(各年1/1〜9/5)、「Property Market Overview 2026 YTD」(現金・ローン・売却益。売却益は借り換えと一次販売を除外して算出と同社が注記)、「Yearly Rental Trends」(フリーホールド地区・Ejari登録日基準)。2026-09-05取得。
CHAPTER 03

投資効率 — どこに、何を買うか

出口が細り、賃料の伸びも止まった環境では、買った時点の賃料と価格で成立している利回りが投資効率のほぼ全てになります。主要13コミュニティのリセール(中古)ベースのグロス利回りは、最も高いDubai Southの8.3%から、最も低いPalm Jumeirahの4.4%まで、約1.9倍の開きがあります。エリア別の利回りを直近3ヶ月の価格モメンタムと重ね、賃貸需要がどこに厚いかを契約データで確認し、予算別の考え方に落とし込みます。

本章の結論を先に3行で。① 中古(リセール)で見たグロス利回りは、郊外・中価格帯(Dubai South 8.3%・JVC 7.3%・Business Bay 6.8%)が高く、ウォーターフロント高級地(Palm Jumeirah 4.4%・Emaar Beachfront 4.6%)が低い。② 利回りが高く、かつ直近3ヶ月の単価がプラスだったのは Dubai South と Dubai Marina の2エリアのみ。③ 賃貸契約の63%がスタジオ・1ベッド。借り手の母数が最も厚いのは小型ユニットです。

1. 主要コミュニティ別グロス利回り(アパートメント)

「リセール利回り」は個人間の中古取引価格に対する利回り、「全体」は一次販売を含めた取引価格に対する利回りです。一次販売は単価が高いため、全体の利回りは低めに出ます。中古で購入する場合の目安はリセール利回りです。分類は下の「投資判断マップ」に対応します。

コミュニティリセール利回り前年比全体利回りリセール単価直近3ヶ月 単価12ヶ月 取引(全体)分類

2. 投資判断マップ — 利回り × 価格モメンタム

リセール利回り5.9%(12エリアの中央値)以上を「高利回り」、直近3ヶ月の単価がプラスを「上昇」として4分類しました。

Dubai Southはリセール利回り8.3%(前年比+0.9pp)と主要エリアで最も高く、単価も直近3ヶ月で+8%です。ただし取引の大半は一次販売で、今後の供給は37,020戸と主要エリアで2番目に多い点が、この利回りの裏側にあるリスクです。Dubai Marinaは中古の単価が直近3ヶ月+12%と主要エリアで最も強く、利回りも5.9%を保っていますが、取引件数は12ヶ月で−32%(リセール)と細っています。Bゾーンの JVC・Business Bay・Damac Hills は、単価が下がった分だけ利回りが上がっており、賃料収入を重視する場合の候補になります。

3. ヴィラ・タウンハウスの投資効率(直近12ヶ月・取引100件以上)

ヴィラは土地代が価格に乗る一方、賃料は面積に比例して上がらないため、グロス利回りはアパートメントを1〜2ポイント下回るのが通例です。

コミュニティ(ヴィラ/タウンハウス)単価 AED/sqft前年比取引件数前年比直近3ヶ月 単価グロス利回り今後の供給
ヴィラは12ヶ月では全地区で単価が前年比プラス(+3%〜+21%)ですが、取引件数は全地区でマイナス(−18%〜−54%)、直近3ヶ月の単価も過半がマイナスです。利回りはTown Square 5.3%・Damac Hills 5.2%が上位で、Dubai Hills Estate(3.1%)・Palm Jumeirah(2.4%)は利回り商品ではありません。ヴィラは「賃貸に回す資産」ではなく「居住用または長期保有の資産」として評価軸を切り替える必要があります。

ヴィラの借り手はどこにいるか(賃貸契約数 上位・直近12ヶ月)

エリア賃貸契約数(12ヶ月)賃料中央値(AED/年)グロス利回り

ヴィラで賃貸契約が最も多いのはDamac Hills 2(5,247件・賃料中央値AED 95K・利回り5.43%)。2位のMirdifは賃料中央値AED 117Kながら利回り2.41%と、価格に対して賃料が低い地区です。Town Square・Villanova・Arabian Ranches 3 は賃料AED 150K〜175Kで利回り4.7〜5.2%と、ファミリー向けの賃貸需要が安定している帯域です。同ページの「Highest Rental Yield」に出る20〜30%台の利回りは取引件数が極端に少ないため採用していません。

4. 賃貸需要の構造 — 間取り別の契約構成比(2026年年初来)

間取り契約数構成比

賃貸契約の63%がスタジオと1ベッドに集中しています。3ベッド以上は14%。高額・大型の物件は、借り手の母数が桁違いに小さいという事実を投資判断の前提として押さえておく必要があります。

アパートメント 賃貸契約が多いエリア(直近12ヶ月)

エリア(DLD区分名)契約数賃料中央値利回り

契約数が多い=空室が埋まりやすいエリアです。JVC(Al Barsha South Fourth)は年間3万件超の賃貸契約があり、賃料中央値AED 65Kで利回り6.45%。International City(Al Warsan First)は賃料AED 37Kと最安帯ながら7.77%と、「利回り最大化型」の典型です。括弧内の通称は当サイトによる補記。

5. グロス利回りからネット利回りへ

本章の利回りはすべてグロス(表面)です。実際の手取りを試算する際は、概ね以下を差し引く必要があります。年間サービスチャージ(RERAが承認する建物ごとの単価×専有面積。目安10〜25 AED/sqft、共用設備が豪華なほど高く、空室でも継続して発生します)、管理委託手数料(年間賃料の5〜8%)、Ejari登録・維持修繕費、空室期間(空室中はチラー(地域冷房)の容量チャージなど固定部分もオーナー負担)。グロス7%の物件でネット5%前後が一つの目安になります。サービスチャージは高級エリアほど高額になるため、グロス利回りの差はネットではさらに拡大する傾向があります。エリア別の実額は実質利回りランキングエリアガイドをご覧ください。

6. 予算別の目安(リセール中央値・グロス利回りベース)

ここまでのデータを購入判断に落とし込んだ3つの型です。価格帯は直近12ヶ月のリセール(中古)取引価格の中央値、利回りは同期間のリセール・グロス利回り。いずれも表面利回りで、手取りは上記の諸経費を差し引いた数値になります。円換算は1AED=43円の概算です。

利回り最大化型 — 予算 AED 80〜120万(約3,400〜5,200万円)
対象スタジオ〜1ベッド
エリア候補JVC(中古中央値 AED 900K・利回り7.3%)/Dubai South(8.3%)/Damac Hills(6.3%)/International City(賃料AED 37K・7.8%)
根拠賃貸契約数が最も厚い帯域(JVCは12ヶ月で3万件超)。直近3ヶ月の単価はJVC −5%・Damac Hills −4%と軟化しており、購入価格に対する利回りはさらに改善しています。
留意値上がり益は限定的。JVCは今後の供給38,269戸と最多で、竣工が集中する時期に賃料が押される可能性があります。管理会社の質で手取りが大きく変わります。
バランス型 — 予算 AED 150〜250万(約6,500万〜1億800万円)
対象1〜2ベッド
エリア候補Business Bay(中古中央値 AED 1.5M・6.8%)/Sobha Hartland(AED 1.4M・6.1%)/Dubai Hills Estate(AED 2.0M・5.7%)/Dubai Creek Harbour(AED 2.5M・5.3%)
根拠利回り5〜7%と資産性の両立。Sobha Hartland・Creek Harbourは今後の供給が年間取引の1.4〜1.5年分と薄く、販売済97〜99%。
留意Business Bayは今後の供給24,923戸、直近3ヶ月の単価−7%。Dubai Hills Estateは取引件数が12ヶ月で−53%と細く、売却時の時間コストを見込む必要があります。
資産保全型 — 予算 AED 300万〜(約1億3,000万円〜)
対象2〜3ベッド/ウォーターフロント
エリア候補Downtown Dubai(中古中央値 AED 3.0M・4.9%)/Dubai Marina(AED 2.4M・5.9%・直近3ヶ月 +12%)/Palm Jumeirah(4.4%)
根拠供給が薄く(Marina 1.9年分)、単価の下支えが厚い。Marinaは中古単価が直近3ヶ月で主要エリア最強。
留意利回りは4〜6%台で、ネットでは3%前後まで下がる物件も。Downtown・Marinaとも取引件数は−24〜−32%。賃料より資産性・居住価値を評価軸に置く投資です。
出典: DXB Interact「Area Performance」(主要13コミュニティ・12ヶ月/3ヶ月・アパートメント/ヴィラ)、「Most Active Areas」(賃貸契約・利回り)、「Yearly Rental Trends」(間取り別契約数)。2026-09-05取得。利回りはグロス(表面)値。エリア候補は各データ指標に基づく例示であり、特定物件の収益を保証するものではありません。
CHAPTER 04

一次市場(オフプラン)戦略 — 優位とリスクを同じ重さで

2026年1〜8月の住宅取引の72%は、デベロッパーからの一次販売(大半がオフプラン)でした。買い手が新築に集中している構図は前号と同じです。ただし本号のデータは、その一次市場にも変化が出ていることを示します。①一次販売の件数自体が8月にアパートメント−41.2%(前年同月比)と落ち込み、②新規契約と更新契約の賃料差(新築が取れる「新規契約プレミアム」)が2月の+21%から8月の+12%に縮み、③主要エリアの今後の供給は最大で年間取引の3〜5年分に達しています。

1. 一次販売の比率と、その中身

年別の一次(デベロッパー販売)とリセール(個人間)の件数と単価。2026年は9/5までの部分値です。一次販売の単価は中古より高く、2026年はAED 1,731 対 1,543で+12%。この差は2024年の+17%から縮小しています。

一次販売はどこで売れているか(アパートメント・直近12ヶ月・DLD区分名)

エリア(DLD区分名)価格中央値一次販売 件数前年比

Dubai Southが12ヶ月で13,932件(前年比+98.8%)と2位に5,000件以上の差をつけ、直近3ヶ月では6,149件・アパートメント一次販売の約4分の1を占めます。中央値AED 948Kという価格帯が買い手を集めている一方、一次市場の勢いが特定エリアの低価格帯に依存していることも意味します。JVC(−29.7%)・Business Bay(−46.3%)など従来の主力エリアの一次販売は大きく減っています。

2. 新規契約と更新契約の賃料差 — 縮小しています

ドバイでは更新時の賃料引き上げがRERA賃料指数によって制限される一方、テナント入替時の新規契約にはその制限がかかりません。竣工直後の物件は定義上すべてが「新規契約」から始まるため、この差が一次市場(オフプラン)の隠れた利点でした。2026年のアパートメント(全間取り)の月次推移です。

2026年(アパートメント)1月2月3月4月5月6月7月8月
最重要の発見。新規契約の賃料は2月のAED 68,000をピークに8月はAED 64,722(−4.8%)と下がる一方、更新契約はAED 56,000→57,791(+3.2%)と上がり続けています。結果として新規契約プレミアムは2月の+21%から8月の+12%へ半減しました。更新は指数に沿って過去の上昇分を取り込み続けているのに対し、新規契約は市場の実勢——「いま借り手がいくら払うか」——を直接反映します。新規賃料が下がっているという事実は、賃料の天井が見え始めていることを示す、本号で最も重要なシグナルです。

一次市場で購入した物件の収益計画は、多くの場合「竣工時に新規契約賃料で貸し出す」前提で組まれています。8月時点でも新規契約は更新契約を+12%上回っており、初回テナント付けの優位は残っています。ただし、①その差は縮んでいる、②新規賃料の絶対額は年初より下がっている、③2〜4年後の竣工時点で新規賃料がいまの水準にあるとは限らない——この3点を竣工時の想定賃料に織り込む必要があります。デベロッパーの資料に記載された想定賃料が、2026年前半の新規契約水準(AED 65,000〜68,000)を前提にしていないかをご確認ください。

3. 今後の供給とエリア別の消化状況

主要13コミュニティの「今後の供給(未引き渡し戸数)」と「販売済比率」。参考として、直近12ヶ月のアパートメント取引件数(一次+リセール)で供給戸数を割った「年数」を併記します。厳密な吸収期間ではなく、いまの取引ペースが続いた場合に控えている供給が何年分に相当するかの目安です。

コミュニティ今後の供給(戸)販売済状況12ヶ月 取引件数供給÷年間取引
供給が最も多いのはJVC(38,269戸)とDubai South(37,020戸)で、それぞれいまの年間取引の2.6年分・3.5年分です。Dubai Southは販売済比率62%と、主要エリアで唯一「まだ売れていない在庫が4割近く残っている」エリアでもあります。Business Bay(24,923戸・2.4年分)も供給が厚い。一方、Sobha Hartland・Dubai Creek Harbour・Dubai Marinaは供給が年間取引の1.4〜1.9年分と相対的に薄く、供給が薄いエリアほど、竣工集中による賃料・中古価格の押し下げを受けにくいという構造は変わりません。

4. 予算別 一次市場の考え方

価格帯は直近12ヶ月の一次販売の価格中央値(アパートメント)。円換算は1AED=43円の概算です。

予算A AED 80〜120万(約3,400〜5,200万円)
対象スタジオ〜1ベッド・一次販売
候補Dubai South(一次中央値 AED 948K)/JVC(AED 1.1M)/Wadi Al Safa 5(AED 947K)
根拠一次販売が最も動いている帯域。賃貸契約の63%がスタジオ・1ベッドで、竣工後のテナント付けが最も容易です。
留意Dubai South・JVCは供給が年間取引の2.6〜3.5年分。同一エリアで竣工時期が重なるプロジェクトを避ける必要があります。
予算B AED 120〜250万(約5,200万〜1億800万円)
対象1〜2ベッド・一次販売
候補Business Bay(一次中央値 AED 2.3M)/Dubai Creek Harbour/Sobha Hartland/Dubai Islands(AED 2.8M・一次+67.6%)
根拠Creek Harbour・Sobha Hartlandは供給が薄く(年間取引の1.4〜1.5年分)、販売済97〜99%。竣工集中の影響を受けにくい帯域です。
留意Business Bayは供給24,923戸・一次販売−46%。Dubai Islandsは新興エリアで中古の実績がまだ薄く、出口の検証ができません。
予算C AED 250〜500万(約1億800万〜2億1,500万円)
対象2〜3ベッド/タウンハウス・一次販売
候補Dubai Hills Estate/Downtown Dubai/Dubai Creek Harbour
留意3ベッド以上の賃貸契約は全体の14%。借り手の母数が小さく、賃貸に回す前提なら入替時の空室期間を長めに見る必要があります。Dubai Hillsは取引件数−53%(12ヶ月)。
予算D AED 500万〜(約2億1,500万円〜)
対象ヴィラ・一次販売(供給限定コミュニティ)
候補Palm Jebel Ali(一次・12ヶ月 286件)/The Oasis(848件)/Jumeirah Golf Estates
留意ヴィラ一次販売は1〜8月で−44%、単価はピーク比−8.1%。利回りは2〜3%台で、値上がり益とライフスタイル価値を評価軸に置く投資です。買い手が最も薄いセグメントであることを前提にしてください。

共通する前提。①一次販売の支払いは分割(例:竣工まで60〜80%・引き渡し時に残額)が一般的で、支払先がDLD管理のエスクロー口座であることを必ず確認します。②DLD登録料4%・登記手数料・Oqood登録費は分割プランの外側で発生します。③中央値はエリア全体の値で、同じエリア内でもプロジェクト・階数・眺望で単価は大きく異なります。④いずれの型も「竣工後に賃貸で保有できること」を成立条件とし、竣工後すぐの転売益を前提にしていません。手順は買い方ガイドを参照してください。

5. 一次市場で必ず確認したい4つのリスク

01 竣工リスクと引き渡し遅延工期の遅れは賃料収入の開始時期を後ろにずらします。デベロッパーの実績と財務、DLDのエスクロー口座への支払い、RERAのプロジェクト進捗(Project Status Enquiry)の確認が前提になります。
02 供給集中 — 2〜4年後に同じ物件群が一斉に在庫になるいま住宅取引の72%が一次販売ということは、それらが2〜4年後に順次竣工し、中古市場と賃貸市場の在庫になるということです。JVC・Dubai South・Business Bayは今後の供給が年間取引の2.4〜3.5年分。竣工時期が同一エリアに集中していないかを確認してください。
03 出口の制約 — 転売前提の計画は成立しにくいリセール取引は1〜8月で約3割減。一次販売の単価は中古より+12%高く、この差は縮小傾向です。竣工後すぐの転売を前提とした計画は、いまの流動性環境では成立しにくく、賃貸に回して保有する選択肢を必ず併せて設計してください。
04 賃料の天井 — 新規契約賃料が年初より下がっている(本号で追加)新規契約賃料の中央値は2月のAED 68,000から8月のAED 64,722へ低下し、新規契約プレミアムは+21%から+12%に縮みました。竣工時の想定賃料を、更新契約水準(AED 57,000前後)に近い保守的な値で置いたうえで、それでも利回りが成立するかを確認してください。
一次市場の優位は「新しいから」ではなく、①買い手の7割が一次販売に集中している(出来高)、②新規契約の賃料プレミアムがまだ残っている(賃貸・ただし縮小中)、③分割払いで初期資金を抑えられる(資金効率)という3点にデータの裏づけがあるからです。同時に、①一次販売の件数自体が減り始め、②プレミアムは半減し、③供給は積み上がっている——この3点も同じデータが示しています。この両面を数字で確認したうえで判断することが、いまの局面での最善の守りです。
出典: DXB Interact「Market Overview」(一次/リセールの年別件数・単価)、「Most Active Areas」(一次販売・アパートメント・12ヶ月)、「Area Performance」(今後の供給・販売済比率)、「Cycles — Monthly · Rental Trends」(新規/更新別の月次賃料中央値・Ejari登録日基準。8月の新規はAED 64,722.40の表示値を四捨五入)。2026-09-05取得。新規契約と更新契約の賃料差には対象物件の築年・グレード・立地構成の違いが含まれ、差の全額がRERA賃料指数の引き上げ制限に起因すると断定できるものではありません。「供給÷年間取引」は当サイトによる参考計算です。
CONCLUSION

結び — 4章の結論と、次の一歩

4章を通して一貫していたのは、価格はまだ高い位置にあるが、それを支える取引の量と賃料の伸びが先に細り始めているという構図です。前号の「買い手が新築に移動している」は引き続き事実ですが、その新築市場にも減速の兆しが出ました。現時点でデータが支持するのは次の3点です。

01 — 流動性6〜12ヶ月出口の想定期間を従来の2倍に。リセール取引が約3割減の環境では、売却期限のある資金での購入は慎重に。
02 — 利回り8.3%〜6.8%いまの賃料で成立する利回りで選ぶ。賃料中央値は横ばい、新規賃料は年初から低下。将来の賃料上昇を当て込まず、購入時点のネット利回りで判断します。
03 — 供給1.4〜1.9年分供給の薄いエリアを選ぶ。Sobha Hartland・Creek Harbour・Marinaは今後の供給が年間取引の2年分未満で、竣工集中の押し下げを受けにくい構造です。
同時に、以下はデータが支持しません。「オフプランなら必ず値上がりする」「竣工後すぐ転売して利益が出る」「賃料は上がり続ける」とは本号のどのデータからも言えません。一次販売の単価は中古より+12%高く、その差は縮小しています。新規契約賃料は年初より下がっています。竣工時期が同一エリアに集中していないかの確認、デベロッパーの実績・財務とエスクロー口座の確認、そして賃貸保有を含めた出口設計を、購入前に必ず行ってください。
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ご予算・保有期間・出口の想定・ビザの要否によって、選ぶべきエリアもユニットタイプも変わります。ご状況をお知らせいただければ、本レポートのデータに基づく個別のエリア分析と、月次レポートのPDF版をお送りします。不動産エージェントの方からのお問い合わせも承ります。

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データ出所。DXB Interact(dxbinteract.com・原データ Dubai Land Department / Ejari)。取得日 2026年9月5日。利回りはグロス値。本ページは情報提供を目的としたものであり、特定の不動産の購入・売却を勧誘するものではありません。記載のエリア・物件タイプは例示であり、特定物件の収益を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。

よくある質問

2026年8月のドバイ不動産の取引件数はどれくらい減りましたか?
2026年8月の登記件数は12,018件で、前月比−15.0%、前年同月比−35.9%でした。1〜8月の累計は112,239件で前年同期比−18.5%です。夏場の季節要因だけでは説明できない減少幅で、特に個人間の中古(リセール)取引はアパートメント・ヴィラとも約3割減っています。
ドバイの不動産価格はまだ上がっていますか?
時間軸によって答えが変わります。2026年の年間平均単価はAED 1,718/sqftで前年比+3.9%とプラスですが、四半期で見るとアパートメントは2025年Q3のAED 1,762をピークに2026年Q2はAED 1,714(−2.7%)、ヴィラはAED 1,526からAED 1,403(−8.1%)へ反落しています。年間平均ではなく四半期の数字で確認することをおすすめします。
いま利回りが高いエリアはどこですか?
主要13コミュニティのリセール(中古)ベースのグロス利回りは、Dubai South 8.3%、JVC 7.3%、Business Bay 6.8%が上位で、Palm Jumeirah 4.4%、Emaar Beachfront 4.6%が下位です。利回りが高く、かつ直近3ヶ月の単価がプラスだったのはDubai SouthとDubai Marinaの2エリアのみでした。いずれもサービスチャージ控除前の表面利回りです。
オフプラン(一次販売)の優位はまだありますか?
2026年1〜8月の住宅取引の72%はデベロッパーからの一次販売で、買い手が新築に集中する構図は続いています。一方で一次販売の件数自体も8月に大きく減り、新規契約と更新契約の賃料差(新規契約プレミアム)は2月の+21%から8月の+12%へ縮小し、主要エリアの今後の供給は年間取引の2〜3.5年分に達しています。優位とリスクの両面を数字で確認したうえで判断する局面です。